投稿

ラベル(economy)が付いた投稿を表示しています

半導体戦争 失われた30年

イメージ
 1980年代日本では「半導体は産業の米」と言われ半導体が繁栄を極めた時期もありました。現在、半導体は地政学的な「安全保障の重要な米」へと変化しました。 クリス・ミラー著のフィナンシャル・タイムズ ビジネスブック・オブ・ザ・イヤー2022受賞「半導体戦争(CHIP WAR)」は半導体の誕生、進化をアメリカを軸に台湾、日本、韓国の動向、独裁国家のソ連、中国の動向を踏まえ時系列的に描かれた半導体叙事詩です。 著者のクリス・ミラー(Christopher Miller)は技術地政学、半導体、ソ連を専門にするアメリカの政治学者で、この著作で一躍有名になりました。 私はパナソニックで機器のソフト開発に従事し、CPUと呼ばれる半導体(コンピュータ)や周辺の様々な半導体を使い、装置のソフトウェアを開発していたため、半導体の進化や、海外の半導体の栄枯盛衰や日本の半導体の凋落をリアルタイムに経験してきました。 そのため、この本は半導体の進化がわかるテクノロジの物語としてだけでなく、各国の半導体を巡る熾烈な駆け引きの裏側がわかる、スパイ小説のような面白さがあります。 今回のウクライナ戦争、台湾有事からもわかるように「半導体」は安全保障の面からも非常に重要な「物資」であり、製造のための複雑なグローバルサプライチェーンは重要な「システム」でもあります。さらに「半導体」はクラウド、AIといったITの進化に欠かせない重要な成長エンジンでもあります。 本の後半では中国の半導体の情報の盗み出し、海外の半導体会社の買収、社員の引き抜きとあらゆる手段で半導体を1国で製造しようとする試みと、アメリカのファーウェイの締め出し、半導体製造機械の輸出規制の対向措置が詳しく書かれており、正に半導体は安全保障上の重要な「物資」「システム」であることが分かります。 現在の半導体は設計(ファブレス)、前工程(ファウンダリ)、後工程(OSAT)の分業体制で製造されていて、インテルのみが全工程を自前で行っています。 半導体で、性能を決めるプロセスルールを決める工程が前工程(ファウンダリ)でありトップは台湾のTSMCで、現在プロセスの3nmの量産を目指しています。3nmを実現するために重要な装置がオランダのASML社のEUV(極端紫外線)リソグラフィ装置で1台180億円します。TSMCとASML無しでは高性能の半導体は製造

小さき青き鳥を忘れず Twitterのロゴマークが「X」に変更

イメージ
段階的に Twitterのロゴマークが「X」に変わりつつあります。イーロン・マスクのTwitter買収の目的は、Twitterを統合アプリにしてマネタイズの仕組みを構築し収益を上げる事にあったので、リブランディング戦略であるロゴマークの変更は単なる思いつきではなく、予定された戦略だったと思います。今回のブランド変更はTwitterは「X」という統合アプリとして今後展開しますというプロモーションです。ニュースに取り上げられるので、広告料はかかりません。さすがイーロン・マスクは巧みにメディアを利用します。 私の場合は、Twitterは矢野顕子や鈴木慶一、野宮真貴といったミュージシャン本人の「つぶやき」を閲覧していた程度なので、イーロン・マスクのTwitter買収を受けて、アカウントを削除しました。エンジニアの大量解雇によってシステムが脆弱になりアカウントの流出が懸念されたためです。以降、Twitter無しで生活していますが特に困りません。 今回のロゴ変更で、イーロン・マスクの欲しかったものは「Twitter文化」ではなく、世界で4億人以上いるアクティブユーザーだったことが分かります。本来のM&Aとはそういうものなのでしょう。 「Twitter文化」を惜しむ声も多く聞かれます。朝ドラ「舞いあがれ」で再注目された歌人の俵万智もTwitter上に以下の句をつぶやきました。以下引用 言の葉を ついと咥(くわ)えて 飛んでゆく 小さき青き鳥を忘れず このままで いいのに異論は 届かない マスクの下に唇をかむ 寂しいね… Twitterとイーロン・マスクを入れながら、自らの心情を吐露するところは、さすが言葉のプロです。 Twitterなどのアメリカで運用されているSNSは、アメリカの資本主義の原理で動きます。この際、Twitterからアメリカの影響を受けない純国産SNSのミクシーに乗り換えるのも良いかもしれません。

MicrosoftはGenAI(生成AI)のリーダーになれるか

イメージ
 生成AIブームは盛り上がりを見せています。日本語の生成AIは、英語のGenerative AIとはニュアンスが異なるため最近では、シリコンバレーでよく使われている省略形GenAIと呼ばれることが増えています。この記事では生成AIをGenAIと呼ぶようにします。 2023年7月18日、Microsoftは、Officeソフトウェアと連動する新たな法人向けGenAIツール「Copilot(コパイロット)」の利用料金を月額30ドルで提供することを発表しました。chatGPTに代表されるchat型のGenAIは、敷居が高くて使いこなすのが難しいと考えている人も多いと思いますが、業務で使用しているExcelやWord、パワポの中にGenAIが組み込まれることにより、爆発的にGenAIの利用が進むことが予想されます。 又、Meta(旧:フェースブック)は同日に、次世代のオープンソース大規模言語モデル「Llama 2」の提供開始を発表しました。更にMicrosoftとMetaは、長年のパートナーシップを拡大し、MicrosoftはLlama 2 の優先パートナーになることも発表しました。 Microsoftの株価は18日に約4%上昇し、過去最高値を更新し、時価総額は2兆6700億ドル(約372兆円)となりました。GenAIの世界でMicrosoftとMetaが連携し、Googleに対峙する事になります。 GAFAMのなかでMicrosoftはコンシューマー向けではなく企業向けの影響力が強いため、GenAIが一部の技術オタクのネタから一気にビジネスツールとして普及するかもしれません。 個人的にはWindowsのアップデート、Officeのバグ等でMicrosoftには痛い目ばかりあっていますが、GenAIのリーダーは何処になるのか、動向が気になります。 GenAIのメインプレイヤーはアメリカであり、日本企業はGenAI競争には関係なさそうですが、いいニュースもあります。 2023年7月6日に、日本のIoTスタートアップ企業のSORACOMと日本のAIの第一プレイヤーの東京大学大学院工学系研究科松尾研究室がGenAIのIoT分野での活用を研究・推進するチーム「IoT x GenAI Lab」を設立しました。これからは日本の新しい産学連携の新しいプレイヤーに期待したいと思います。

縮小日本#5 成長のない繁栄 Beyond GDP

イメージ
 しばらく、あいだが空きましたが「シリーズ縮小日本#5」の最終回はこれからの日本はどうすべきか、私たちはどう行動すべきかについて述べます。 最近、話題になっているジェイソン・ヒッケル(Jason Hickel)著「資本主義の次に来る世界」を読みました。この本が今回のテーマのヒントになると思いますので、興味のある方は一読をお勧めします。 著者の「ジェイソン・ヒッケル」はアフリカのエスワティニ(旧スワジランド)出身の最近注目されている経済学者です。英国王立芸術家協会のフェローであり、現在は欧州グリーン・ニューディールの諮問委員を務め、「ランセット 賠償および再分配正義に関する委員会」のメンバーとしても活躍しています。 地球温暖化、環境問題の視点から、地球の資源、生命を破壊しながら歯止めなく成長し続ける資本主義の危険性を説き、「アミニズム」の観点から成長しない社会の提案をし、次に来るべき社会を示唆してくれる本です。 最近、ドイツの自然保護区では25年間で飛ぶ昆虫が75%が消滅しているとの衝撃的な調査結果が報告されています。昆虫の減少が広域で起きています。大企業による、大規模農業の影響により森林だけでなくミミズ、微生物を含む大量の生命が失われ、土壌の生態系が大規模に破壊されていることが明らかになってきました。海でも魚の大量な捕獲により生態系が大規模に破壊されていることが、報告されています。 資本主義は、無限に成長することを前提にしたメカニズムの経済であり、脱炭素を目指す電気自動車のイノベーションも、希少金属を大量に消費することで、地球環境を破壊しています。 解決策は、成長しないことにあります。GDP(国民総生産)は豊かさを表す指標として使われてきましたが、精神的な満足度を必ずしも表してはいません。現在注目されているGPI(Genuine Progress Indicator )は「人が経済的・社会的にどれほど順調であるか」を示す新しい指標です。 アメリカは資本主義を止めることは無いでしょうが、既に北欧、ブータン、コスタリカではGPIを指標にした脱資本主義「成長なき繁栄」の試みは始まっています。これらの国では医療・教育などの社会インフラの充実を政府主導で行い、シェアビジネスのような所有権から使用権へのパラダイムシフトを加速させています。 以前、日本の成長にイノベーションが欠か

楽天モバイルとラマンチャの男「三木谷社長」

イメージ
新聞記者は上司から「携帯は必ずNTTドコモを持て」と言われるそうです。それは新聞記者が、過疎地域や離島、山岳地帯に取材に行った時に、一番繋がりやすいのはNTTドコモであることを経験上知っているからです。 携帯事業の本質は、日本全国、津々浦々に携帯の基地局をどれだけ設置しているかの基地局の量と質にあります。「人口カバー率」という指標はトリックがあり、都市部に集中的に基地局を設置すれば上がるため、総務省は「基盤展開率」と言った日本全土を10Kmのメッシュにして基地局の数を指標にしようとしています。NTTドコモの場合、前身が国営企業であったこともあり、国からの補助金を受けて離島、山岳地帯に地道に基地局を設置しています。そのため「基盤展開率」はキャリアの中で一番です。 この携帯の世界に無謀にも参入した会社があります。それが「三木谷社長」率いる楽天モバイルです。図は各キャリアの設備投資額を表すグラフです。2020年度におけるキャリア各社の設備投資額はNTTドコモが5691億円、KDDI(au)は3615億円、ソフトバンクが3569億円、楽天モバイルは3359億円と楽天モバイルが最も低いことがわかります。他の3キャリアは既に既存の基地局を保有しているにも関わらず、5G等の投資を行っています。ゼロから基地局を設置していく楽天モバイルの投資額は他のキャリアを大幅に超えていないといけないのですが、この設備投資額はショボすぎます。 最近、YouTubeでホリエモンがさかんに「楽天モバイル売却説」を流しています。ホリエモンは、ライブドア時代に球団買収を試み、最後三木谷社長が「楽天」球団を買収したため個人的な恨みもあるかもしれませんが、楽天モバイルの売却は現実的な流れだと思います。 挑戦と無謀は明らかに違います。自らを騎士と名のり風車に向かって剣をふる「ドン・キホーテ」ことラマンチャの男が、今の「三木谷社長」かもしれません。 最終的に不利益を被るのは「楽天モバイル」のユーザーです。もしあなたや、ご家族が行方不明になった時に、位置情報を特定できるのは、基地局の多いキャリアに加入している携帯電話(スマホ)です。 従って、個人的には「楽天モバイル」の新規加入はお勧めしません。携帯が繋がりやすくコストが安くなるお勧めの方法はNVMO(仮想移動体通信事業者)で基地局をNTTドコモに指定する事です。N

音声読み上げ「Amazon Polly」で文章の校正

イメージ
ブログ記事をchatGPTのWeb-APIを使った自作ソフト「chatGPT編集長」に校正してもらっていますが、意外と「てにをは」のチェックが甘く、読み直すと表現がおかしい箇所があります。 最後は自分で原稿を読み直してチェックするのですが、新たな校正ツールとして、テキストの音声読み上げを使用することにしました。 人間の脳は普段から耳で会話を聞き、内容を判断しているため、契約書などは、自分で文章を読み込むよりも、読み上げてもらうほうが効率的に違和感のある箇所や間違いを探せると言われています。 業務では「音読さん」を使用して、主に動画のナレーション作成に使用しています。無料版では1月5000文字で、私のブログの1記事が平均1200文字程度なので、無料版枠を超えてしまいます。 ネットで調べた結果、AWS(Amazon Web Service)の中に深層学習を使ったテキスト読み上げサービス「Amazon Polly」が1年間は500万文字/月無料です。1年過ぎると100万文字/月で4ドルなので、お試しで使ってみることにしました。おそらく、家で使っているスマートスピーカーAlexaも同じ技術を使っていると思います。 AWSは個人での使用のため、ブログ用のAWSアカウントを作成して、「Amazon Polly」を早速試してみました。使い方はWeb上にテキストエリアに読み上げるテキストをコピーをして「読み上げ」ボタンを押すだけです。「音読さん」よりもイントネーションが劣る気もしますが、目的は文章のチェックなので十分使えます。 Amazonはネットショッピングの会社のイメージがありますが、自社でショッピングサイトを運用するために使用していたサーバーを利用して新たなビジネスモデルを構築しました。それがクラウドコンピュータのサービスAWS(Amazon Web Services)です。AWSはクラウドの基本となるプラットフォームで、「メルカリ」などのSaaS(Software as a Service)の下支えになっている技術です。現在、クラウドのシェアはトップですが、MicrosoftのクラウドAzureに猛追をされています。原因は生成AIに特化したクラウドコンピューターをMicrosoftが提供しているからです。chatGPTもMicrosoft Azure上で動作しています。 生

WWDC2023開催 MRヘッドセット「Apple Vision Pro」登場

イメージ
 6月5日(日本時間6月6日)にアップルの開発者向け会議WWDC2023(Worldwide Developers Conference 2023)が開催されました。 毎年新製品の発表があるアップルのWWDCですが、今回注目されていたのはMRヘッドセットでした。MR(Mixed Reality)とは、仮想現実VR(Virtual Reality)と拡張現実AR(Augmented Reality)を組み合わせた複合現実のことを指します。 そして、今回のイベントでついにMRヘッドセット「Apple Vision Pro」が発表されました。ビデオを観る限り、メタのVRヘッドマウントディスプレイ「Meta Quest Pro」、つまりメタバースのヘッドセットとは一線を画する製品です。 メタのVRヘッドセットでは、装着すると仮想空間VRの中に没入するため、装着中の長時間使用は非常に疲れます。また、現実の世界が見えないため、事件や事故災害の発生などの安全上の問題も懸念されます。 一方、アップルの「Apple Vision Pro」は、仮想と現実を組み合わせて、通常の景色の中に仮想的なオブジェクトを出現させるため、装着していても疲れることはありません。 最新鋭のLED、マイクロLEDが、4K相当の解像度のディスプレイに左右の目にそれぞれ2つ搭載されており、両眼の視神経の解像度を超えるため、本物のように見えます。 しかし、価格が3499ドルと日本円で50万近くするため、新型のMacなど他の新製品を発表したにも関わらず、株価は184ドルから178ドルまで下落してしまいました。 iPhoneにしても、Apple Watchにしても、発表された時点ではネガティブな評価もありましたが、アップルは、他のテック企業よりも地道にコストダウンやソフトウェアのブラッシュアップを誠実に行う会社です。今後、「Apple Vision Pro」が「Apple Watch」のようにブレイクするか、「Apple TV」のようにブレイクしないかはわかりませんが、新しい驚きを私たちに与えてくれたのは確かです。新製品はワクワクします。

モバイルの歴史 絵具チューブとウォークマンそしてiPhone

イメージ
最近、携帯電話やスマートフォンをモバイル端末、略してモバイルと呼称するようになりました。モバイルは英語でmobile(発音は「モボ」に近い)で、ラテン語のmobilis(動かせる)から派生しています。つまりmoveo(動かす)+-bilis(~できる)が語源で、「動かせること」を意味します。 1928年、ヨーロッパの絵画の世界でイノベーションが起きます。金属製絵具チューブの発明です。 従来、絵画は絵具が乾いてしまうために、アトリエで作成されていました。絵具チューブの発明により、絵画を戸外でも制作出来るようになります。 画家たちにとっては、戸外で絵を描くことは新たな驚きと発見があり、アトリエにはなかった自然光の元で風景が描けるようになります。絵具チューブの発明が印象派の誕生につながる一つの要因とされています。モバイルが絵画に影響を与えることなりました。  1979年、私が学生の頃にソニーから、画期的な商品「ウォークマン」が発売されました。「ウォークマン」は音楽を「聴く」から「持ち歩く」へをコンセプトに開発されたポータブルカセットプレイヤーです。当時3万3000円とかなり高額だったため、ウォークマンを先輩にお借りして原付きバイクに乗りながら音楽を聴いたことがありました。音楽を聴きながら街の風景が変わっていく様は、今でも新鮮に覚えているほどのインパクトがありました。音楽のモバイルの始まりです。 2001年、私が社会人の頃にAppleから、画期的なハードディスクのモバイル音楽プレイヤー「iPod」が発売されます。 私は第3世代iPodの10GBを購入しました。価格は初代「ウォークマン」とほぼ同様の3万6800円でした。私が持っている全ての曲がデジタル化され、iPodに入り、いつでも好きな曲を聴くことができるのは、本当に感動的でした。その後、iPodは進化を遂げて、ハードディスクからフラッシュメモリーに変化し、更に薄く軽くなりました。 2007年、最も重要な変化が起こります。日本ではガラパゴス携帯電話が最盛期の時代にAppleのiPhoneが誕生します。インターネットに繋がることにより音楽はクラウドまで拡張されました。iPhoneは携帯電話の進化系ではなく、iPod(モバイル音楽プレイヤー)の進化系であり、Mac(コンピューター)の進化系です。 さらにこの時点で、Appleは

ゴールドラッシュとシャベル NVIDIAの躍進 

イメージ
新しく発見された金の土地に一攫千金を狙う採掘者が殺到することをゴールドラッシュ(Gold Rush)と言います。1848年ごろにアメリカ合衆国カリフォルニア州で起きたゴールドラッシュは、西部劇などでも有名です。 個人的には、矢沢永吉が口から黄金のような光を吐き出すアルバム「ゴールドラッシュ」のジャケットを思い浮かべてしまいます。 一方、ゴールドラッシュは投機的なものに人気が殺到するたとえでもあります。今、chatGPTを始めとする生成AIのブームはAIゴールドラッシュとも言われいます。 新しい金を求めて、マイクロソフトを始めとするテック企業、活用を模索する一般企業・政府、アプリケーションを開発するスタートアップ企業、AI評論家、コンサルティングなど多数の人々が、生成AIに集結しています。 そんな生成AIを下支えする企業が、生成AIに親和性の高い半導体を製造するNVIDIAです。NVIDIAはアメリカのシリコンバレーにある半導体メーカーであり、元々はゲーマーの間で「グラボ」と呼ばれるゲーム用の3Dグラフィックスボードを専用に製造していました。ゲームではリアルな画像描画のために、座標位置などの計算をベクター単位で高速に行う必要があります。そのため、グラフィックに特化した専用の半導体がGPUでした。 NVIDIAは2016年以降の深層学習(ディープラーニング)ブームで転機を迎えました。AIの深層学習に使用するテンソル計算にGPUが向いていることが分かり、GPUは次第に深層学習の学習データ作成用のPCに採用されていくようになります。2023年のCOMPUTEXでのNVIDIAのCEOのKeynoteによると、同社は現在、サーバー分野のAIにシフトしようとしています。 最近、NVIDIAの決算がアナリストの予想よりも良かったため、株価は急騰し、時価総額は一時期1兆ドルを超えました。半導体メーカーでは初めてのことです。アップル、マイクロソフトと並ぶ新しい巨大テック企業の誕生です。2021年に一度、株価が上昇したのは、業界では有名なCPUの会社ARMをNVIDIAが買収しようとしたからです。独占禁止法に抵触するおそれがあったため株価は一時下落しましたが、生成AIのゴールドラッシュにより株価が急騰しました。 カリフォルニアのゴールドラッシュでは金を見るける人とそうでない人で明暗が別

マイクトソフト VS グーグル Webの覇権争い

イメージ
先ごろ、 マイクロソフトの「Microsoft Build 2023」と言うテクニカルイベントが開催されました。マイクロソフトはOpenAIと連携し、自社製品のブラウザーEdge、Officeシリーズに積極的に生成AIを活用しようとしています。 ワードでNDA(機密保持契約書)のチェックをCopilotがしてくれます。Copilotとはマイクロソフトの生成AIのプラグインで、副操縦士という意味があります。 携帯事業で遅れをとったCEOスティーブ・バルマー氏が辞めて、サティア・ナデラ氏になってからは、マイクロソフトはクラウドにかじを切り業績も向上してきました。 私達がWebで使用する検索は、検索エンジンと呼ばれる検索のソフトが使用されています。検索エンジンは大きく2種類あります。一つはグーグルの検索エンジン、もう一つがマイクロソフト製検索エンジンBingです。ヤフーサイトで使用する検索はグーグルの検索エンジンを使用しています。今までは検索エンジンとブラウザー(Chrome)のシェアは圧倒的にグーグルの勝利でした。2022年6月時点でグーグルの検索エンジンの世界シェアは約92%です。検索エンジンはWebの世界から情報を集め支配するための重要なソフトです。支配が必要な理由はWebの広告を支配できるからです。アルファベット(グーグルの親会社)の収益は広告収入が81%を占めています。つまり、グーグルの本業は、テック企業というよりも、電通と同様の広告会社です。 chatGPTの出現により、私達は「ググらなく」くても必要な情報に最短でたどり着くことが出来ます。このグラフは最近の検索エンジンの利用ユーザーの遷移です。ビルドインされたchatGPTを持つBing検索の使用頻度が増加傾向にあることがわかります。 しかし、検索エンジンのシェアの減少は、広告収入に頼っていたグーグルのビジネスモデルにとって脅威となっています。 テック企業の栄枯盛衰はダイナミックであり、2023年以降は「GAFAM」に変わって「MATANA」の時代が到来すると予想されています。「MATANA」はMicrosoft、Amazon、TESLA,Alphabet(Google),NVIDIA,Appleです。最初にFacebook(Meta社)が脱落すると予想されています。 ビジネスパーソンにとっては、Window

Speed of Life 銀行破綻とインフォデミック

イメージ
最近、アメリカの シリコンバレーバンク、 シグネチャーバンクの経営破綻 と金融不安が広まりつつあります。 原因は、同然各金融機関の経営の失敗と各国の利上げ政策にあると言われていますが、破綻を加速させたのがSNSであると言われています。 シリコンバレーバンクは2 日でスピード破綻に追い込まれました。政府関係者は 「これはTwitterにあおられた初めてのバンクラン(取り付け騒ぎ)だ。正しい道筋を見極めるには冷静さを保ち、臆測ではなく事実を見ることが重要だ。」と発言しています。 2020年にコンサルティング会社デロイトトーマツは「1世紀で150万倍に増大した情報伝達力 ~ 情報の急速な伝染「インフォデミック」とは」というレポート公開しました。 「インフォデミック」とは情報(Information)の流行(Epidemic)の意味で、「情報の急速な伝染(Information Epidemic)」を短縮した造語で、2003年にSARSが流行した際に使われ始めました。 SARS流行時(2002年)の情報伝達力はスペイン風邪当時の約2.2万倍、新型インフルエンザ流行時(2009年)は約17.1万倍となり、そして、新型コロナウイルスが流行している2020年現在では、スペイン風邪流行時の約150万倍にまで到達しました。ラジオ、テレビの普及は勿論ですが最近20年間の伸び率を牽引しているのはTwitterを始めとするSNSです。 このグラフは約100年前のスペイン風邪を1として場合のパンデミックの情報伝達力を示すグラフです。(デロイトトーマツレポートより引用) SNSは災害時の情報共有等便利な点もありますが、ファクトチェックを経ない情報はデマの拡散や、悪意を持ったフェイクニュースの拡散の危険性があります。 マサチューセッツ工科大学のTwitter研究では「事実が伝播するのは1000人程度であるのに比べ、ウソは多い時は10万人まで拡散する。拡散力において100倍、拡散速度は20倍」という結果がで出ています。 SNSはロシアや中国等の権威主義国家の情報戦の兵器としても使われています。「認知戦(Cognitive Warfare)」と呼ばれる世論操作、世論の分断工作です。2016年アメリカの大統領選でのロシアの介入(ロシアゲート事件)は有名です。 今後、chatGPTに代表される生成AIに

日本縮小#2 なぜ日本でイノベーションが起きないか? 農耕VS狩猟

イメージ
日本縮小#2。今回は、日米のIT関連分野に絞って、私の考えを述べてみたいと思います。 【原因1:気質】 日本は、島国で農耕民族であり、古代から天皇を中心とした歴史ある国です。昔からあまり危険を犯してまで冒険する必要もなく、安全・安心な暮らしを好みます。また、農耕民族の場合、集団で作業を行うため「和」を重んじます。いわゆる空気を読むことです。 一方、米国は欧米からの狩猟民族が移民してできた新しい国です。米国のITの中心地シリコンバレーのあるカリフォルニアは、約200年前からゴールドラッシュと呼ばれる金を求めるために一攫千金を狙う山師が世界中から集まった地域でもあります。「和」よりも個人主義が強く、空気を読まないことが多いです。 日本は、良くも悪くも成熟した人々の静かな国であり、一方の米国は山師たちが一攫千金を狙う活気ある国です。イノベーションはゴールドラッシュから生まれたのかもしれません。 この図は、2004年からGoogleで検索されたキーワードを可視化するサービスを使って、「技術革新」と「イノベーション」のキーワードを可視化したグラフです。このグラフには、それぞれのピークの要因と考えられるイベントを示します。 A.2006/9:イノベーション25戦略会議(内閣府) B.2013/1:イノベーションの創出(経団連)C.2021/6:総合イノベーション戦略(内閣府)D.2022/6:総合イノベーション戦略(内閣府) イノベーションに関心が向いたのは安倍内閣の頃からです。 一方、GAFAMのイノベーションの歴史を年代的に並べます。 2004年にFacebookが誕生し、2005年にはYouTubeが開始され、2006年にはAWS(クラウドコンピュータ)がスタートし、Twitterも同じ年に始まりました。さらに、2007年にはiPhoneが販売され、2009年にはWindows 7がリリースされました。 【原因2:米国の戦略】 日本がイノベーションを起こせなかった2つめ理由は、バブル時代まで遡ります。1980年代、日本の経済は急成長していましたが、米国は日本に追い抜かれることを恐れ、半導体業界を攻撃し始めました。1986年9月には「日米半導体協定」が締結され、その後、韓国や台湾が半導体技術の開発に乗り出し、そしてサムスンやTSMCといった企業が発展することになりました。 

日本縮小#1 なぜ日本人の給料は上がらないのか? 「All You Need Is Innovation」

イメージ
先日、ビザスク主催の「AIの進展とイノベーション(Innovation Day 2022 基調講演)」をオンライン視聴しました。講師は、日本のAIの第一人者である東京大学の松尾豊教授でした。 なぜ日本人の給料がアメリカ等の先進国に比べて上がらないのか?その要因の一つはイノベーション(Innovation)にあると言われています。イノベーションは新しい創造・発明で、新たな市場や新たな経済を生み出す現在の錬金術です。 この図は、経済産業省がWebに掲載している「スタートアップ」についての資料です。日本の株価とアメリカの株価はTOPIXとS&P500で変わりはありません。GAFAM(Google、Amazon、Facebook(Meta)、Apple、Microsoft)の株価が、アメリカの経済を大きく牽引していることがわかります。私たちは普段iPhoneでGoogle検索して、Amazonで買い物し、仕事でWindowsを使っています。使用しているのはアメリカの製品やサービスであり、お金はアメリカに吸い上げられて行きます。 図は企業の収益を示す公式です。y(t)が企業の利益を示します。利益が増える要因は2つあります。1つは頑張って利率(r)つまり儲けを増やす方法。2つ目は、高速に物事を進めることで(t)を増やすこと。特にtは指数なので効果は大きいです。つまり、経営の速度を上げることが成長の鍵となります。 1つは「スタートアップ企業」、日本でも、アメリカでも、事業速度を上げることは大企業より「スタートアップ企業」の方は有利です。2つめが「IT技術」、(t)を高速に回すため「インターネット、ソフトウェア」を中心とした「IT技術」を活用します。例えばソフトの品質を長時間のテストではなく、頻繁なアップデートで担保することができます。「スタートアップ企業」のEVメーカーのテスラは、ディーラーを持たず、自動車の機能更新をすべてソフトウェアで自動更新することで(t)を高速に回す戦略をとっています。 経済の成長に必要なのは「スタートアップ企業」と「IT技術」です。なぜ、日本でイノベーション(Innovation)が起きないのでしょうか? シリーズ「日本縮小」続きは#2で。 ちなみに「日本縮小」は小松左京「日本沈没」、「All You Need Is Innovation」はBe