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7月 9, 2023の投稿を表示しています

縮小日本#5 成長のない繁栄 Beyond GDP

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 しばらく、あいだが空きましたが「シリーズ縮小日本#5」の最終回はこれからの日本はどうすべきか、私たちはどう行動すべきかについて述べます。 最近、話題になっているジェイソン・ヒッケル(Jason Hickel)著「資本主義の次に来る世界」を読みました。この本が今回のテーマのヒントになると思いますので、興味のある方は一読をお勧めします。 著者の「ジェイソン・ヒッケル」はアフリカのエスワティニ(旧スワジランド)出身の最近注目されている経済学者です。英国王立芸術家協会のフェローであり、現在は欧州グリーン・ニューディールの諮問委員を務め、「ランセット 賠償および再分配正義に関する委員会」のメンバーとしても活躍しています。 地球温暖化、環境問題の視点から、地球の資源、生命を破壊しながら歯止めなく成長し続ける資本主義の危険性を説き、「アミニズム」の観点から成長しない社会の提案をし、次に来るべき社会を示唆してくれる本です。 最近、ドイツの自然保護区では25年間で飛ぶ昆虫が75%が消滅しているとの衝撃的な調査結果が報告されています。昆虫の減少が広域で起きています。大企業による、大規模農業の影響により森林だけでなくミミズ、微生物を含む大量の生命が失われ、土壌の生態系が大規模に破壊されていることが明らかになってきました。海でも魚の大量な捕獲により生態系が大規模に破壊されていることが、報告されています。 資本主義は、無限に成長することを前提にしたメカニズムの経済であり、脱炭素を目指す電気自動車のイノベーションも、希少金属を大量に消費することで、地球環境を破壊しています。 解決策は、成長しないことにあります。GDP(国民総生産)は豊かさを表す指標として使われてきましたが、精神的な満足度を必ずしも表してはいません。現在注目されているGPI(Genuine Progress Indicator )は「人が経済的・社会的にどれほど順調であるか」を示す新しい指標です。 アメリカは資本主義を止めることは無いでしょうが、既に北欧、ブータン、コスタリカではGPIを指標にした脱資本主義「成長なき繁栄」の試みは始まっています。これらの国では医療・教育などの社会インフラの充実を政府主導で行い、シェアビジネスのような所有権から使用権へのパラダイムシフトを加速させています。 以前、日本の成長にイノベーションが欠か

ブライアン・イーノ旧作をリビルド Dolby Atmosへの挑戦 

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最近、音楽や映画で話題になっている、ドルビーアトモス(  Dolby Atmos)は、ドルビー研究所の開発した音をより立体的に再生することができる新しいサラウンド再生規格です。 従来はチャンネル毎に割り付けられたトラックに音声データを用意するのではなく、音の固まり毎に音声データと位置情報を用意して、音の再生時に  、リアルタイムに演算をして音の位置からの再生を行うため、音の左右上下の音場が再現できる優れた規格です。 装置のCPU、DSPの演算速度が早くなったため映画館だけでなく、最近ではホームシアター用スピーカーや、スマートフォンのイアホンでも再生可能になりました。 最近、私の所有しているSONOSのスピーカーにサブウーファーを追加購入して、映画を サラウンドで 観ています。SONOSは ドルビーアトモス対応のため、 アトモス 対応の映画はより 立体的なサラウンドを楽しむことができます。 2023年7月、私の好きなミュージシャン、ブライアン・イーノが旧作を含む以下の7作品をドルビーアトモスでAmazon Music Apple等で配信を開始しました。 「Taking Tiger Mountain」(1974年) 「Another Green World」(1975年) 「Small Craft On A Milk Sea」(2010年) 「Drums Between The Bells」(2011年) 「LUX」(2012年) 「Reflection」(2016年) 「The Ship」(2016年) 今年、75歳になるブライアン・イーノですが、積極的に最新のテクノロジーを取り入れて自ら新しい領域に入っていく好奇心とチャレンジ精神は尊敬に値します。彼はドルビーアトモスについて以下のように語っています。 「3D音楽が興味深いのは、(ステレオ・リスニングなどによってもたらされる)2次元の空間よりもはるかに多くのディテールを維持した没入空間を作り得る可能性があることです。私たちの耳は目ほど指向性がありませんが、それでも空間内の音の位置を特定する能力があり、3次元で聴くことで、まったく新しい作曲の可能性が生まれ、またそれによってリスナーに、より複雑な方法で音楽空間を“探検”する経験を可能にします。それこそが、2次元のサウンド・ペインティング(2D絵画)から3次元のサウンド・

ロシアとトランプ 策略国家ロシア#3

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 ロシアシリーズの3回目は、ロシアとトランプの関係についてです。 トランプ元大統領(現在ではトランプ容疑者)の政権の内幕を詳しく描いたボブ・ウッドワード著書の「恐怖の男 トランプ政権の真実(Fear: Trump in the White House)」が非常に面白いので、まだ読まれてない方がいたら一読をお勧めします。 著書のボブ・ウッドワードはカール・バーンスタイン記者とともに、ニクソン大統領の「ウォーターゲート事件」を取材し、辞任にまで追い込んだワシントン・ポストの記者です。 この本はトランプ大統領の多くの側近からのインタビューからトランプ政権の内幕をリアルに描き出しています。ジェームズ・マティス国防長官はトランプ大統領の理解力は「小学5年生か6年生」程度であり、文書でなく動画のブリーフィング資料を好んだとも言われています。又彼は典型的なサイコパスであり、自己中心主義者ゆえに、ホワイトハウスは「混乱し、機能不全に陥り、準備が整っていない」状態に陥ります。それでも民主主義国家ゆえのシステムがなんとか政権を運営していましたが、トランプ政権時代、民主主義は大きく後退し、国家はリベラルと保守に分断されました。 又、Qアノンに代表される荒唐無稽の陰謀論がSNSで流布され、最後には議事堂襲撃という内戦に至ってもおかしくない事態となりました。トランプを大統領にして、世論を分断させ、大統領敗北から議事堂襲撃させた背景に、ロシアのサイバー攻撃、情報戦と認知戦があります。 前出の書籍「プーチン」の下巻に、トランプとロシアの関係が詳細に記載されています。トランプは大統領になる前の不動産業を経営していた時期に、自己破産の危機に陥ります。それを助けたのがロシアのオリガルヒと呼ばれる富豪たちです。 ロシアとトランプの関係は深まり、大統領になる前の2013年には「ミス・ユニバース」大会に出席するためモスクワを訪問します。かつてオバマ大統領が泊まったリッツカールトン・ホテルの大統領スイートで、オバマ大統領への当てつけから複数の売春婦を呼び寄せて乱痴気騒ぎをします。策略国家ロシアは、弱みを握るため当然その様子を隠しカメラで録画します。 ロシアはトランプを利用するため、2016年の大統領選ではヒラリー・クリントン陣営をハッキングしてメールの内容を晒すことでトランプを大統領に就任させます。 その後、

「空気」に忖度しない ジャニーズ関連の山下達郎発言に思う

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 現在、連日のようにジャニーズ性加害問題関連の報道がなされ、この問題に巻き込まれたかたちで山下達郎のラジオでの発言が話題となっています。 ジャニーズ事務所に関する個人的な思い出があります。パナソニック時代に、2000年代開始されたデジタル放送でデータ通信の内容を印刷できるホームプリンタKX-PG2の開発に関わったことがあります。 当初テレビの画面をスクリーンショットして印刷する機能を入れる予定でしたが、関係者の話ではジャニーズ事務所からの猛反対にあって、この機能はボツとなりました。録画は個人使用で許されるのですから、納得いきませんでしたが、長いものにまかれてしまいました。それが原因かわかりませんがホームプリンタは見事に売れませんでした。 個人的には、ジャニーズ事務所の高圧的な態度を実感し、今でもジャニーズ事務所には不信感を持っています。 一方、山下達郎はシュガー・ベイブ時代からのファンであり、現在アナログ盤で再発売されている一連の作品は大学時代によく聞きました。特に「MOONGLOW」はジャケットも良いしオープニングのコーラスのかっこよさは今聴いても感動します。又、サンソンこと山下達郎の「サンデー・ソング・ブック」はRadikoの普及とともに、今では日曜の夜にお風呂に入りながら聴くことが日課となっています。 今回の、音楽プロデューサー・松尾潔さんの契約終了問題について7月10日の「サンソン」で山下達郎自身の言葉で説明を行いました。彼の説明は率直であり、音楽に関わるものとして、事件とは別に作品へのリスペクトは尊重されるべきであるという真っ直ぐな正論でした。 その中の発言の又一部の切り取られ波紋を呼んでいます。正確を期すため発言の一部を掲載します。 ”彼らの才能を引き出し、良い楽曲を共に作ることこそが、私の本分だと思ってやってまいりました。この様な私の姿勢をですね「忖度」あるいは「長いものに巻かれている」と、その様に解釈されるのであれば、それでもかまいません。きっとそういう方々には、私の音楽は不要でしょう。” これに対して、「偉そうだ」とか「作品を人質に取った」とかネット上では様々な意見が出ています。そもそもこの発言は、興味本位や記事にするために山下達郎の「サンソン」を普段聴いていないリスナーに対しての発言です。昔のミュージシャンなら「いやなら聴くな、バカヤロー!」ぐら

シブヤ大学 「今、台湾でなにが起きているのか?」

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 シブヤ大学は、NPO団体が運営する生涯学習を提供するプロジェクトです。以前、福岡在住の頃に姉妹校であるテンジン大学の授業に参加していた関係で、関東に戻ってからはシブヤ大学の授業に参加しています。月に数回の授業があり、興味のある授業に参加しています。授業は基本的に無料で、普段は接することのない領域の講師の話を聴くことができ、有益な体験ができます。 今回のテーマは「今、台湾でなにが起きているのか?」で、講師は台湾在住のノンフィクションライターの近藤 弥生子さんです。 彼女の主な著書は「 オードリー・タンの思考 IQよりも大切なこと(ブックマン社)」「 オードリー・タン 母の手記「成長戦争」 自分、そして世界との和解(KADOKAWA)」であり、 オードリー・タンに関心のある私は、是非話を聴いてみたいと思い授業に参加しました。 オードリー・タンは台湾のデジタル大臣であり、天才プログラマーでもあります、コロナ対策のリーダーとして様々なアプリケーションを短期間で立ち上げ、デジタル・ガバメントのリーダーとして一躍有名になりました。 授業は「台湾 ✕ デジタル」と題して、現在台湾で行われているシビックマインド/デジタル民主主義とオープンガバメント/ソーシャルイノベーションについて分かりやすく解説してくれました。又「台湾 ✕ ジェンダー」ではジェンダーへの台湾の取り組みを賃金格差・議員男女比率・同性婚などを法制度の面から説明してくれました。そして、最後は台湾が、最近力をいれている「台湾 ✕ デザイン」というデザインの行政と台湾文創(歴史・文化・創造性を結びつけた産業)について解説がありました。 台湾の昔のイメージは小籠包の美味しい親日派が多いの観光地でしたが、最近はTSMCをはじめとする半導体産業主体のデジタル戦略と、台湾有事と言われる中国からの侵攻の懸念から、台湾のイメージがだいぶ変わって来ています。 今回の授業を受けて、改めて日本に比べデジタル化、民主化、若者の政治参加が進んでるることに驚きました。台湾は国家として認められていません、そのため欧州のGDP以外のグローバルな指標を意識して、デジタル化、民主化を進めて行っています。 一方、日本はマイナカードの普及もままならないデジタル後進国ですし、夫婦別姓すら認めない保守的な国であり、ジャニーズ問題に代表される忖度のまかり通る、自

映画「岸辺露伴ルーブルへ行く」 日本とフランスとアート

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休日に色々な予定があり、 観たくてもなかなか行けなかった、映画「岸辺露伴ルーブルへ行く」を観ました。 NHKが人気シリーズ 「岸辺露伴は動かない」 を映画化した作品が 「岸辺露伴ルーブルへ行く」です。70歳までにルーブル美術館に実際に行きたいと思っていたので気になっていた映画です。 岸辺露伴シリーズは、荒木飛呂彦による「ジョジョの奇妙な冒険」の漫画のスピンオフであり、その映像作品がNHKの高橋一生主演「岸辺露伴は動かない」です。私は、原作の漫画は読んだことはありませんが、ドラマ「岸辺露伴は動かない」は毎回観ていました。ストーリーの面白さに加えて、特殊能力「ヘブンズ・ドアー」の人間の記憶の映像化が斬新で、独特の世界観に惹かれます。 シーズン2の「背中の正面」「六壁坂」は市川猿之助が出演しているためにオンデマンドではもう観ることはできません。 ルーブル美術館は、BD(バンド・デシネ)プロジェクトと呼ばれるアニメ・漫画の紹介にも力をいれており、このプロジェクト5弾目として荒木飛呂彦が漫画「岸辺露伴ルーブルへ行く」を作成しました。そのため、日本とフランスの繋がりを意識した作品になっています。 「黒」は全ての光を吸収するため見えないことにより、見える特別な色です。この「黒」を描くために使用した特別な顔料で描かれた、この世で「最も邪悪な黒い絵」を巡るストーリーは、実際にルーブル美術館でロケが行われており、絵画好きにはとても興味深いミステリー映画です。この絵画は250年前に日本で描かれ、最後はルーブル美術館に保管されていました。 前回のブログでも書いたように、日本の浮世絵はフランスの印象派に影響を与え、現在の日本の漫画・アニメはフランスでもアートとして高い評価を受けています。日本とフランスの美意識はどこか通ずるものがあるのかもしれません。 やはり、フランスには惹かれます。