デイヴィッド・ホックニー展 創作は続く

猛暑のなか東京都現代美術館(MOT)で開催中の「デイヴィッド・ホックニー展」に行きました。

デイヴィッド・ホックニーは1980年代、ニューペインティングブームの頃の「プール」の絵画で有名になり、雑誌「ブルータス」で特集されたり、原宿辺りのおしゃれなカフェバー(今は死語)に絵が飾られたりしたのを思い出します。横尾忠則もニューペインティングに影響を受けてイラストレーターから「画家」に転向します。


最寄り駅が「清澄白河駅」にある東京都現代美術館(MOT)は、ニューヨーク近代美術館(MoMA)と同様に、現在アートを中心とした展示会を行っている、私の好きな美術館の一つです。過去に大規模な「横尾忠則展」やパヒュームの演出でおなじみの「真鍋大度」の個展などが開催されています。

現代で最も革新的な画家のひとりデイヴィッド・ホックニーの日本では27年ぶりとなる大規模な個展で127点もの作品が展示されています。現在、86歳を迎える彼ですが、現在はフランスのノルマンディーで精力的に作品を作り続けています。

展示会では作品は年代ごとではなく分野ごとに展示され、古い作品と今の作品が見比べられるように工夫されていたり、高い天井を利用した意表を突く展示のレイアウトがあったりと、キュレーターである東京都現代美術館の学芸員がいい仕事をしています。

デビッド・ホックニーは画家本来の創作活動をするとともに、過去の絵画の研究にも熱心で2010年に、科学的、視覚的な根拠により過去の画家はレンズを組み合わせたカメラの原型のような装置を使い密かに精密な画を描いていたという衝撃的な本「秘密の知識」を出版します。当時美術史の常識を変えたことでも有名です。


展示会の終盤にあたる1階に展示されている最近の作品群は特に圧巻です。2019年から彼はノルマンディーで創作活動を開始し、コロナ禍のなかiPod、インクジェットプリンター等の最新のテクノロジーを使い、日本の絵巻物に影響を受けた全長90メートルの大作「ノルマンディの12か月」を作成します。この階は写真撮影が許可されていますので、行かれた方は自分の好きなアングルでこの巨大作品を写真に収めることをお勧めします。

デイヴィッド・ホックニー、横尾忠則は80歳代で、草間彌生に至っては90歳代で創作活動を続けています。何か新しいモノを創作することは、多大な労力を要しますがその対価として体と脳に創作のエネルギーがフィードバックされるのかもしれません。エネルギーの正体は「好奇心」「創作の衝動」でしょうか。

デイヴィッド・ホックニーの作品がほぼ全て観ることができる非常に満足できる展示会でした。現代アートに興味のある方は観覧をお勧めします。

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